ページ ページ10
A「ごめん、ね。」
うまい言い訳も思いつかない自分に呆れてしまう。
誰だって未読無視されたら怒る。
しかも食事の誘いに対してだし、渉くんの都合もあるだろうし。
うらた「まあいいけど。…おすすめどれ？」
A「…えっ、あ、この季節のタルトがおすすめ！」
うらた「じゃあそれ４つ。」
A「！…ありがとう！」
無視してしまった自分に自己嫌悪していると、先ほどより少し柔らかい声色でお勧めを問われた。
このタルトは私が提案して商品化したもの。
自画自賛できるほどにおいしいの。
まあ今はそんなこと渉くんに言えるようなテンションでもないんだけど…
でも買ってくれるみたいなので、食べてくれたらいいなあと思いながら箱に詰める。
A「冷蔵庫で冷やしすぎると生地が固くなっちゃうから、早めに食べてね。」
うらた「おう、」
お会計を済ますと箱を袋に入れて、お店の扉の近くまで運ぶ。
袋を渡す時にこうしてアドバイスをひと言。
おいしいって少しでも笑顔になってくれたら嬉しいなあ。
うらた「今日の夜、7時に家の前な。逃げんなよ。」
扉をあけてありがとう、と言いながら手を振って見送ろうとすればその背中は止まってそう呟いた。
A「えっ、」
うらた「じゃあ。」
返事をする間も無くまた彼は歩き出して、駅の方へ向かっていった。
今日の夜、7時に家の前。
おそらく待ち合わせということだろう。
この時間ならきっと食事に行くとか。
それくらいさすがにこの歳になればわかる。
幸いにも今日の仕事は5時まで。
自宅へ帰るまでの時間を考えても十分間に合う。
今回こそは無視は許されないし、断るのもきっと許してくれない。
それに、素直に言えば私だって行きたいんだ。
私がこんな、複雑なことを考えなければすべてうまくいくはずなのに、どうしてもそうはいかなくて悔しい。
だけど今日は少しだけ、渉くんとまた色々話がしたいと思えた。
それはさっき、私がケーキを渡した時の彼の目が、私が小さい頃に勉強を教えてくれてた時の彼の目と同じだった気がしたから。
きっと私と渉くんの間には何も変わらないものがあるはずなんだと、都合よく思えてしまった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 553人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
飴玉(プロフ) - 続き気になります！応援してます！ (2019年12月7日 0時) (
レス) id: 8c5a0e2b14 (このIDを非表示/違反報告)
のの(プロフ) - 、さん» 設定を誤っておりました。申し訳ございません。修正しました、ご指摘ありがとうございます。 (2019年11月30日 21時) (レス) id: 4b7f932ad4 (このIDを非表示/違反報告)
、 - オリジナルフラグというものをちゃんと外して下さい (2019年11月30日 21時) (レス) id: da04285dd4 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：のの | 作成日時：2019年11月30日 20時
