豪華客船は幼なじみと恋をする【短編集】

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A「なんか、不思議だったな、、」


10年以上接点を持つことのなかった幼馴染と、またこんな風に話すなんて。
もう二度とないと思ってたからこそ、なんだかとても新鮮で。
ベッドに寝転がって考えていると、手元のスマホが震えた。


『今日は付き合ってくれてありがとう。』


通知欄に表示されたそのメッセージの差出人は渉くん。
こういうとこは律儀なんだなあ、と思ったりする。
ていうか、むしろ奢ってもらったから私がお礼を言わないといけない立場だったんじゃ…？
と今更ながら少しの後悔。


『あと、あの時はごめん。』


なんと返すべきか、考えていたら再度震えたスマホ。
あの時……？
パッと思い浮かんだのは渉くんに拒絶されたあの日。
だけど今更謝るかな。。
今日何かされたっけ？なんて考えてみても結局思い当たる節は見つからない。


『こちらこそありがとう。楽しかった！』
『あの時って…？』


とりあえずこれだけを打ち込んで送信。
よくわからないけれど、まあ、きっと教えてくれるだろう。


『ばーか』


結局そのあと渉くんから送られてきたのはその3文字だけで、解決できなかった。
怒った犬のスタンプを送ったけど、見事無視されました！
ほんと相変わらず。

私の覚えてる限りでは、昔の渉くんは私に少し冷たかったと思う。
同級生の女の子といる時とかはたくさん笑ってるのに、私の前ではあまり笑ってくれない。
私をいじって楽しんでる時くらいな気がする。
小さい頃はそれがなんか悔しくて、寂しかった…気がする。
でも私が頑張った時とか、泣いてる時とか、いつも一番に頭を撫でてくれたのが渉くんで、すごくすごく嬉しかったんだよね。
渉くんにすごいとか、大丈夫とか言ってもらえただけで、それだけで他は何だってよかった。


A「寝よう、」


明日も仕事。
今は仕事が恋人みたいなものだし頑張らなくちゃ。

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