豪華客船は幼なじみと恋をする【短編集】

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だけどまあ、その“違う部分”を見たいからこそ、私はライブに行くのかもしれない。
みんなにいじられて笑ったり、難しい振り付けを踊れたって嬉しそうにしていたり、そういうみんなが好きな坂田くんを私も見てみたかったんだと思う。


A「坂田くんが笑ってる顔、好きだし。」

坂田「…そうなんや、」

A「うん、なんていうか、元気貰える。」


坂田くんの方に笑顔を向ければ、想定外の少し困ったような、切なげな表情。
あれ、私気に障るようなこと言ってしまった、、？
だけどそういえば、以前の坂田くんは私がライブに行くことを好ましく思ってなかったようだし、何かしらの理由があるのかもしれない。


坂田「ライブの時の俺って、かっこ悪いやんか、」


そう言ってもらえるんは嬉しいんやけどさ、と前振りをしてひと言。
かっこ悪い、、、？
あれだけの女の子たちを魅了して、楽しませる彼が。
いったい誰がそう思うんだろうか。


坂田「歌詞も振りもミスるし、メンバーにはよういじられるし、、可愛いとは言ってもらえてもかっこいいとはあんま言われへん。」


たしかに、ライブで見る坂田くんはかっこいいというよりかわいいという感じ。
それは私も思っているし、彼のファンの多くもそう思っているかもしれない。
だけど、かわいい＝かっこ悪い、は違うと思うんだよなあ。


坂田「やから正直、Aには見せたくなかってん。」


ため息をつくように言葉を落とす坂田くん。
私にはその話と私のどこに関係があるのかよくわからなくて、反応に困ってしまう。

話の流れから彼の考えを解釈するならば、かっこ悪い姿を私に見られたくなかった。
それがなぜなのか、と考えて何も浮かばないほど私も子どもではない。
だけど最初に浮かんだそれは、私たちの間ではほとんど考えてこなかったもの。
当たり前の関係になりすぎていて、考える余地のなかったもの。

しかしながらこれまで、優しいとはいえ、そっけなさのある姿を見せてきた彼が、私に対してそんな気持ちを抱くなんてことがあるのか。
少なからず、私の人生で得てきた知見を参考にしても、その可能性は見当たらない。
だとすれば、他に理由は、、と考えてもわからないのも事実だ。


坂田「ほんま、かっこつかへんな、俺。」

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