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なんで、しか言わなくなった私に彼は理由を淡々と話してくれた。
聞くところによると、渉くんがちょうど出かけようとした時に、うちのお母さんと家の前で会ったらしい。そして「職場に急遽呼ばれてしまった」と焦っていたお母さんから、私に傘を届けるよう頼まれたそうだ。
お母さんは保育所の責任者をやっていて、急遽呼び出されることも珍しくない。
なんていうタイミング、、、
A「えっ、ていうか用事あったんじゃ…?」
うらた「ああ、コンビニ行こうとしてただけ。」
A「うーん、それなら、、余計な手間を取らせてごめんね。」
うらた「まあ暇だったし全然いいけど。」
話しながら駅を出て、先ほど受け取った傘をさす。
持ち手は少しだけ温度を持っていて、、ってなんか変態みたいじゃん。
まさか、またこんな風に喋るなんて、隣を歩くなんて、思ってもいなかったから正直かなり心拍数が上がっている。
小さい頃は毎日のように遊んでたし、私はわっくんわっくんって、渉くんに構ってもらえることが本当に嬉しかった。
だけど、私が中学生になる前くらい、渉くんはもう高校生で、ある日いつも通り学校が終わって渉くんの家に遊びに行った。
渉くんのお母さんは笑顔で迎えてくれて、そのまま渉くんの部屋に入ると、ただ一言、
「もうAとは遊ばねえから。」
だからもう来るな、とか言われてしまって、それ以来遊びに行くことをやめたし、口も聞いていなかった。
元々家族ぐるみで仲がいい私と渉くんの家は、よく一緒にバーベキューや花火をしたり、外食に行ったりしていたけど、そんなイベントに渉くんが来ることもなくなった。
その後は日常で当たり前だったはずの渉くんの存在も、お母さん伝いで勝手に入ってくる渉くん情報や、たまたま部屋の窓から見えた渉くんとか、たまたま家の前で鉢合わせした時とか、ほんのわずかなものになっていった。
少し前を歩く渉くんの背中は昔見たものよりはもちろん大きくて、雰囲気も大人だと感じさせられる。
まだまだお子ちゃまな私より、何倍も大人だ。
しかも、渉くんのお母さんから聞いた話によると、加入しているユニットで武道館ライブをしたりもしているらしい。
詳しくは全然わからないけれど、つまりそれって、有名人ってことでしょ?
うらた「A、ちょっとお茶しよ。」
目の前の背中が止まったかと思うと、振り返って横にある喫茶店を指差す彼。
私がこくりと頷くと、彼は少しだけ嬉しそうに笑った…気がする。
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飴玉(プロフ) - 続き気になります!応援してます! (2019年12月7日 0時) (レス) id: 8c5a0e2b14 (このIDを非表示/違反報告)
のの(プロフ) - 、さん» 設定を誤っておりました。申し訳ございません。修正しました、ご指摘ありがとうございます。 (2019年11月30日 21時) (レス) id: 4b7f932ad4 (このIDを非表示/違反報告)
、 - オリジナルフラグというものをちゃんと外して下さい (2019年11月30日 21時) (レス) id: da04285dd4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:のの | 作成日時:2019年11月30日 20時