片思いのふたり〜ネット界のスーパースターとFANTASTICSのパフォーマーは幼なじみだった件〜【澤本夏輝】

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｢なつくん。｣

ん？…この声は…。
もしかして…

『…A？』

｢なつくん…どうして私を置いていくの？｣
『え？』
｢私、なつくんと離れるなんて嫌だよ…｣

そう言って泣く彼女は
高校の制服を着ているから、これはきっと夢だろう…

泣いている君に手を伸ばそうとした時に…

『…ん…っ…。』

夢から覚めてしまった…。


彼女と僕は小さい頃から一緒だった。
まぁいわゆる幼なじみって関係だった。

もう彼女にはここ10年くらいは会ってもいないし、連絡も取れていないのに…
彼女の夢を見たのは、さっきのリハの時に聞いた声が
彼女そっくりだったから。

声が似ているなんてことは、あるだろうけど
彼女の声にしか思えないのは何故だろう。

彼女の声にしか思えないと言うより
彼女の声だと思いたいって方が強いのかもしれない。

高校卒業を機に僕は上京し、彼女は地元に残った。

突然上京すると言った時も、彼女は応援すると言ってくれた
だから、僕も夢へと向かうための一歩を踏み出せた。

｢おどっているときのなつくん、かっこいいんだよ！｣
小さい頃、キラキラの笑顔でその子が言ってくれた言葉。

それを今でも忘れずに…その子にかっこいい姿もっと見せられるように、夢を叶えたいと思っていた。

でも、高校卒業後
彼女と会うことも連絡を取ることも無くなってしまった。
というか連絡がつかなくなった。

何度か電話をかけたことがあったり、LINEを送ったりしても
返ってくることはなかった。

僕はもう嫌われてしまったのだと思った。

なぜ嫌われてしまったのか、それは多分…
突然上京すると言ったからだと思う。

あの時彼女は｢応援する｣とは言ってくれたけど、とても悲しそうな顔をしていた
なのに僕は、自分の事ばかりで彼女の気持ちに寄り添えなかった…だから僕は嫌われてしまったんだと思う。

上京したことを後悔しているわけじゃない…
今だって夢を叶えて、アーティストになれた。

だけど…やっぱり彼女のことはいつまでも心残りに思っていて
もう一度彼女に会えたら、ごめんと言いたい。

彼女の近況は、全国的にも地元の有名な企業の社員をしていると聞いた。(母さんに聞いた)


ねぇA。僕はAが居たから
夢を叶えることが出来たよ。
…見てくれているかな？


動画を流しては、Aに重ねてしまうあたり。


『違うのにね…』

僕は今でも君が忘れられないんだと
気付かされた。

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