09 : 前を向くために ページ38
✦
「……行ってきます」
旅立ちの時が来て、私は長年住んだ実家を離れることになった。
両親から5歳の時にもらった誕生日プレゼント。180センチを超える大きな機械に初めは驚いたことをいまでも覚えている。怖くて泣きわめいてしまった時、カレはその大きな手で私を包みあやしてくれた。
最後の最後までカレに泣き顔しか見せていなかった。
後悔は山ほどあるが、私はもう、前を向かなくちゃいけない。
「……パパ、ママ、……また。帰ってきてもいい?」
甘えたようにそういえば「ここはAの家なんだからいいに決まっている」と父に言われた。
また、涙が溢れそうだった。
「うん。……私いっぱい頑張って今より素敵な人になって帰ってくるんだからね……っ」
そう涙目で意気込めば両親は優しく笑う。
この姿をカレにも見せたかったけれど、わがままは言わない。
だから、待っててそまちゃ。
いつか必ず、あなたを取り戻すから。
彼女の部屋にまだ眠るアンドロイド。
その素敵な機械はあなたの成長を願う。
✦ END ✦
12人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:Stellar | 作成日時:2024年3月4日 22時