08 : サヨナラの時が来て ページ33
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「A。少し、話があるんだけど」
「え。……なに? 改まって……」
これから何を言われるかも分からない彼女はキョトンとした顔で近づいてくる。
その行動自体に持ってはいけないカンジョウを抱いていることに不思議だとはもう思わない。
「昨日、色々整理してたら、これが出てきて……」
「!!」
ポケットの中から折りたたんだ1枚の写真を取り出す。
そこには5歳くらいの幼い彼女と、今と姿の変わらない俺が写っていた。
驚く彼女をみて知っていたんだと笑いが込み上げる。
「そんな反応するってことは、知ってたんだね。
まあ、……そりゃそっか」
兄弟の居ないAは小さい頃から寂しがり屋で、話し相手になる人物が必要だったらしい。
コミュニケーション能力のある『STPR社』の『Knight Humanoid』タイプは人間の特徴をよく捉えたアンドロイドを制作していたらしい。
ネット社会が中心の今、本音を話せる相手が人間には必要だった。
Aにも。
その相手に選ばれたのが俺だったという話なのだ。
「っ、黙ってたわけじゃ……!」
「わかってる、……でも滑稽なことにさ、自分自身がニンゲンなんだって、思ってたんだよね」
「それは……! そまちゃのせいじゃ……!」
「……、」
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作者名:Stellar | 作成日時:2024年3月4日 22時