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バタンと。扉を閉める。
自分から出てきたのに、寂しさを感じるなんておかしい。
……俺も、早く慣れないと。
彼女と離れ離れになることに慣れなければ、このままずっと引きずってしまいそうだ。
できるだけ自然に。
彼女が青空を羽ばたけるように。
俺は彼女から離れる事を決意した。
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「じゃ、行ってくるねー」
「はーい。気をつけて」
ヒラヒラと玄関先で彼女とお母さんを見送る。
今日は以前俺と行った時に買えなかったバレンタインデーの買い出しに行くらしい。
「あー。はいはい。掃除とお父さんのお昼ご飯ですね。分かってますよ」
「ゆっくりもしててね。
そまちゃ、直ぐに無理するんだから」
「あー……」
この優しさも。
きっと俺にだけじゃない。
『先輩』にも、電話相手にもしていることなんだろう。
彼女は優しい子だから。
「そまちゃ?」
「あー。うん。そうだね」
チクリ。
距離を取ったはずなのに切なさが変わらない。ムネが、痛い。
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作者名:Stellar | 作成日時:2024年3月4日 22時